備忘録

遺書代わり

斜陽

カレーの匂いがどこからかしている。僕は逃げるように窓を閉めて少し泣く。

生まれてきたことをずっと後悔している。

アルコールでこさえた目眩で忘れようとした。

 

 

西南西の空色。屋上のフェンス越しに君と手を繋いだ。死ぬなら今だろう。絶望が色褪せて、思い出になる前に。

 

 

 

星を模したネオンで星の大半が消える。僕に見えないように世界は煌めいてたのかな、とか。

生まれてきたことをずっと後悔している。

メンソールで抑えていた涙が堰を切ったように落ちた。

 

 

これが恋だと言うなら僕には何にも関係ないね。これが現実だと言うなら、もうダメだ、姉さん、先に逝くよ。

 

君の言う通りだ。僕たちは雑踏に呑まれていつか幸せになってしまうんだろう。生きてそしていつか、この苦痛をも、俺も青かったなんて笑うのか。「死ぬなら今、だろ?」って4月最後の北風が背中を押した。

 

 

 

澄んだ大気を深く吸い込む。ぬるい夜風が目にしみる。死ねない僕は、透明な街で、匿名に生きて匿名に死ぬ。

あと数秒で世界に溶ける。夜と朝の摩擦熱で溶ける。せめて太宰治の小説みたいに意味のない言葉で幕を閉じるよ。半透明に閉じるよ。

 

 

 

 

 

恥の多い生涯を送ってきました。

おはよう。